灯火-ともしび-
いい加減限界で、私は唇が離れた隙に彼に背を向けた。
すると、すっと腕が伸びてくる。

「んー…やっぱりシャツ1枚っていうのはいいかもしれません。」

「その発言…変態っぽい。」

「もーこんなふわふわで可愛い夏海さんを抱きしめられるなら変態で構いません。
…それに、俺にしか見せない顔も見れたし、声も聞けたし…。」

「なっ…!」


振り返るといつもよりも嬉しそうに微笑んだ風馬が視界を満たす。
軽めのキスが降りてきた。


「…あんたがキス魔なのはよぉく分かった。」

「キス魔じゃないですよ。こんなにキスしたいのは夏海さんだけです。
こんなにくっついていたいのも夏海さんだけですし。
シャツ、着せたいって思うのも夏海さんだけです。」

「…もうシャツは着ない。あんたの変態スイッチが入るってこともよぉーく分かった。」

「…確かに、シャツはスイッチ入りますね。
お風呂上がりにシャツオンリーの夏海さんは色々やばかったです。」

「っ…そういうこと言わないでよね!」

「ま、今もやばいのには変わりないですけど。
はぁー…でもシャツ越しの夏海さんの抱き心地良すぎてハマっちゃいそうですー。」

「そんなヘンなものにハマられても…。」

「今度はちゃんと、全部脱がせますからシャツ着てくれませんか?」

「っ…あんたどさくさにまぎれて何言ってんの!?」

「えぇー!だっていつか…ねぇ?」

「知らないわよいつかなんて!ばっ…バカ…っ…。」

「照れる夏海さんもかーわいーっ!」

「ちょっ…!」


すりすりと顔を寄せてくる風馬。…完全にただの小悪魔だ。


「いっぱいキスさせてくれてありがとうございます!」

「いきなり何の感謝なのよこの小悪魔!」


*fin*

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