ドライヴ〜密室の教習車〜
「……えっ?」

 里子ちゃんの視点が一瞬おかしくなったようだった。
 それは《混乱》ともとれる。

「それって、どういう……」


「村上さんは自殺だったんですよ」

 篠さんが落ち着いた口調で言いなおす。


「そんな……だって村上くんは背中を刺されていたんですよね?」

「そうです。しかも《教習中》にね」

 里子ちゃんがハッと息をのんだ。

「村上さんは、おそらく3時間目の教習の前に凶器を背中のシートに埋め込んで、時間が経つと飛び出し、そのナイフが背中を突くように仕組んだんです」

 篠さんの説明を、里子ちゃんは焦げ茶色の眉を細めながら聞いていた。
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