ドライヴ〜密室の教習車〜
「敬ちゃあん。その子だあれ? さっきからずっと一緒みたいだけど、敬ちゃんの彼女ってわけじゃないでしょ」

《ユキちゃん》が私を見ている。良く見ると切れ長の目だがまつ毛は長い。自毛か?

「この人は俺の依頼人だ。田中なぎさんだ」

「田中和紗、田中和紗。《さ》を1個忘れてる」
 私は一生懸命、自分の名前を伝えた。

「そうなの~。なぎちゃん、よろしくう~」

「《さ》は?《さ》!《さ》どこいったー」

 私の嘆きは、小さな喫茶店で虚しく響いた。


「ところで。ユキちゃん、さっきの話」
 篠さんが仕切り直す。

「ああ、そうそう。さっきすぐに思い出せなくってごめんねえ。やっぱり《あの子》四、五日前にこのお店に来た子だったわよ~う」

 あの子?
 誰のことだろう。
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