私の恋人は布団です。
1.目覚めの衝撃
 もう,秋も過ぎようとしていた。

 夜になると冷える日が多くなってきた。

 羽河延(はねかわのぶ)は,冷え性である。

 そんな彼女が三度の飯より好きなモノ。

 それは,勿論,布団に他無い。

 特に掛け布団である。

 出来る事ならずっと包まっていたいと彼女は思っている。

 延の布団は,自慢の布団なのだ。

 何故なら,絹の布を折り重ねた布団に,外側には肌に滑らかなガーゼで出来たカバーが掛かっている拘りの掛け布団だからだ。

 ぬくぬくと温もりがあるだけではない。

 通気性も良いので,ほぼ一年中愛用できるシロモノである。

 延は,恐らく一番,この掛け布団が好きだ。

 何よりも。

 誰よりも。

 そう。

 その布団は延の恋人といっても過言ではない。

 今夜も,延はその掛け布団に包まれて幸せな気分で眠りにつく。

 朝,その布団にとんでもない事が起きるなんて予想もせずに。
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