私の恋人は布団です。
ジリジリとけたたましく爆裂音を鳴らす目覚ましを,延は片手で投げ飛ばした。
嫌だ,まだ布団と離れたくない。
この至福の時を邪魔しないで。
延は,布団の何とも言えない温もりに顔を擦り付けて,思った。
そして,寝返りをうつ。
トクトクトク……。
規則正しい心臓の音のようなものが聞こえた。
いつもの延の掛け布団ならば,そんな音はしない。
延は,ゆっくりと目を開けた。
「お早う御座います」
此方を優しい眼差しで見てくる青年。
延は,目を擦った。
(な,な……っ!何で男の人が……!?)
延だって高校生である。
朝起きて,隣に居る男。
それが意味することくらいは分かっていた。