私の恋人は布団です。

 青年はニコニコしながら,眩しいくらい爽やかな笑顔を向けていた。


(いやいやいや!……夢!ああ!そう!夢よ!夢!)


 延は頭の中で激しくまくし立てながら,寝ようとする。


(起きたら,きっと,いつものように私は布団で寝ているはず……!)


「延さぁん…?あの,遅刻しますよ?」


 彼は,ゆさゆさと延の体を揺らす。


(何てリアルな感触……早く覚めて!自分!覚めるのよ!)


 延はどこぞの体育会系のノリで自分に言い聞かせた。



「もう一度寝るんですか?……分かりました!」


 青年は何を思ったのか,延をぎゅうっと抱きしめた。


「ぎゃああああ!!!!な,何すんの!変態!痴漢!」


 延はガバっと大きな音を立てて起き上がった。
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