私の恋人は布団です。
「俺,見ちゃったんだ。君が,布団に変わるの。あれってマジックかな?」
修一と隆也の二人だけしか居ない生徒会室は静かで,修一の声は酷くクリアに響いた。
隆也は,延を想う時の感触とは違った,激しい胸の鼓動が耳の奥から聞こえている気がした。
「……それと,もう一度聞くね。延ちゃんと君の関係は?」
背中に嫌な冷たい汗が流れる。
隆也は鞄の中から生徒手帳を取り出した。
「……ちょっ,……ちょっと待って下さい……!」
震える手で生徒手帳を開き,メモのページを探す。
(確か,このページに……)
隆也が探していたのは,延が校則に書き足した「規則」だった。
其処には,几帳面な字面で3つの事が書かれていた。
その1,『自分が掛け布団だった事を人にバラさない』
その2,『むやみに私に触らない』
その3,『軽々しく私に「好き」とか言わない』
『守れなかった場合は,燃えるゴミの日に追い出すからね!』
そのページを読みながら,隆也の脳内では,それを書いた時の延の言葉が反芻される。
(す,捨てられる……確実に捨てられる……!!)
自分の体中の血が下に降りていくのを感じた。
『言っておくけど……私は本気よ?』
(あれは……あれは延さんの本気と書いてマジと読む目だ……どうしよう……俺……)