正義だって悪じゃない?
第1話[悩む女幹部]





「はい、カット!OKでーす」


監督の声が鳴り響き
撮影終了。


だが、一人
赴かない顔で撮影所から
出て行く女性がいた。

その女性は
茶色のパーマで、
ラメの入った袖無しジャケット
フェイクレザーパンツをはいて、
臀部に武器のようなものが装備されている。

結構セクシーな格好だが、
これは私服である。

余所からみれば
コスプレイヤーの人と間違えてしまうくらい

日常的には
普通じゃない格好だが、
彼女にとっては
当たり前の格好なのだ。

なぜならこの女性
悪の組織の女幹部だからだ。







ヒーローが敵と戦い
人々を守っていく。

それが普通の
ヒーロー達のストーリーだ。

しかし、
ヒーロー達は"敵"の気持ちを
考えた事があるのだろうか?


「シーン36。大逆転シーンよーい、はい!」


監督の掛け声で
ヒーローが戦闘員達を
次々と倒していく。


「メアイヴィスさん。次、ヒーローさんにやられるシーンなんで、宜しくお願いします。」


さっきの女性の名はメアイヴィス

異次元から来た
悪の組織バレルタの女幹部。
臀部に装備している
フェスティーと呼ばれる
銃型ドロイドを使って
攻撃したり、戦闘員を
つくり出したりする。


「メアイヴィスさん入りまーす!」


スタッフの指示通り
立ち位置につくと、
目の前にいるヒーローが
ウォーミングアップをしている。

「はぁ…」


一つ溜め息をつくと
自分の臀部にあるフェスティーを構える。


「シーン37!ヒーロー対メアイヴィス。よーい、はい」


カチンコの音と共にヒーローは
剣を構え、メアイヴィスに
迫ってくる。

普通はここで
対抗するために
ヒーローに攻撃すれば良いのだが、
脚本通りに動かなければならない。

ヒーローの攻撃を
決められた通りに受けていく。


「はい!カット!OKでーす」







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