奇妙な関係 ~オスとワタシの奮闘記~
普段と変わらない当たり障りのない会話。


プライベートの話や仕事の話。


いつ切り出されるかと内心ドキドキしていた。


そのせいで、せっかく美味しいお酒を飲んでいるのに全く酔えない。



「決まったよ」



ドキッとした。


この話題を待っていたのに、いざ持ち出されると焦ってしまう。



「海外赴任、決まったんだ」

「そう、なんですね……」



今朝桃花に聞いて知っていたけど、知らないふりをした。


せっかくこういう場を設けてくれたのに、知ってますよじゃ申し訳ない気がした。



「前に言った言葉、覚えてる?」

「……はい、覚えてます」



暫しの沈黙。


ワインを一口飲み込むにも緊張した。


日下部さんは私の次の言葉を待ってる。


ハッキリと伝えなきゃ……。



「私……日下部さんと一緒に海外には行けません」

「……理由を聞いてもいいかな?」

「やっぱり、彼への好きな気持ちを誤魔化せません。 こんな気持ちのまま他の男性のところへはいけません」



春ちゃんはもういないけど、この好きな気持ちを大切にしたい。


この気持ちに勝る好きなんて、今は微塵も考えられない。





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