奇妙な関係 ~オスとワタシの奮闘記~
暗闇の中で光る大きなスクリーン。


恋愛映画、ホラー映画、アクション映画……いろんな映画が上映されている中、私たちはサスペンス映画を選んだ。


映画に集中したいのに隣にいる日下部さんの存在が、私の意識を乱す。


はたから見たら私たちはカップルに見えるのかな?


春ちゃんと一緒にいる時はどうなんだろう?


春ちゃんの姿がみんなに見えたら、女性から注目の的だろうな。


雄が苦手な私でさえ、春ちゃんは綺麗だと思うから……。


ずっと春ちゃんのこと考えてる。


考えないようにしようって思ってる事自体、気になってしょうがない証拠。


一緒にいる事が当たり前になってて、気付かなかった……色んな事に。


私は……。



「鈴川さんは最後まで見るタイプ?」

「え?」



日下部の声にハッとなり、スクリーンを見るとエンドロールが流れていた。


ヤバ……。


殆ど観てなかった。



「私はどっちでも……」

「じゃあ混む前に出ようか」

「はい」



まだ座っている人に頭を下げながら、私たちは音を立てない様に静かに映画館を後にした。





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