学校監禁ツアー

「キミ、大丈夫かね…?」

目の前にいたのは、如月くんではなく、用務員らしきおじさん。

「っぁ、わた、私…」

「落ち着きなさい。一体何があったんだい…?」

後ろを見ると、誰もいなかった。

開いていたロッカーは閉まり、黒板は綺麗で、机の上にはなにもない。

「あ…」

「帰れないのだろう…?案内するからついてなさい。」

帰れない…?

「で、も…他のみんなは…?」

「他にもいるのか…厄介だな。…これだから」

「あ…あの、私、みんなを探しに行きます!さっき、足音、が…」

たったったっ…

まただ。

足音は、恐らくトイレの方向に行った。
「…アレは違う。」
用務員さんらしきおじさんは、首を振る。

「眞埜硲!」

如月くんの声がする。

「き、如月くん!」
「眞埜硲、みゆきを見なかったか…?」
「え…見てない、けど…」

「さっき、急に走っていってしまって…」

さっき、急に、走って…

あの足音はもしかして…

「私、追いかけてくる」

「え、なにを…」

呆然とする如月くん。

「行かせない…これ以上…コ、ドモが…」

突然、用務員のおじさんがしゃべった。

「眞埜硲っ!!逃げ、ろっ」

「ぅあっ!」

如月くんが私を突き飛ばす。


「如月く…」

ドゴッと鈍い音がした。

私はすぐさま足音のした方向へ走って逃げた。

…視界の片隅に頭から血を流した如月くんを捉えながら。




走って、走って、気がついた。

私は今、トイレの一番奥の個室にいる。
なにかの気配が足音をたてずに近寄ってくる。

それは、私のまえでとまった。

気配はなかなか消えない。

どうして私は保健室にいる城崎くんのところではなく、足首の方へ逃げたのだろうか…


バンッ

ドアが叩かれる。

私は、身を堅くしてじっとする。

バンッバンッ

バンッバンッバァンッバァンッドカッ

ドアをたたく音は次第に強さを増してきた。私はめをつむる。 …如月くん…

ピタリ


音が気味の悪いほど唐突に終わった。


あ。助かっ…

「どうして返事してくれないの…?」


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