あおぞらカルテ
オレは感心しながら、花怜ちゃんを見つめた。

目が合うと花怜ちゃんはサッとそらす。

それは、いつものことだった。

だけど…


「道重先生、鈍すぎですよ」


初めは何のことかサッパリわからなかった。


「…なにが??」


ポカンと口をあけたまま、電子カルテの前で首をひねる。

なにが鈍いって?


「花怜ちゃん、先生のこと好きなんじゃないですかねぇ…」

「え?なんでそうなんの?」

「だって、明らかに違うでしょ?僕に対する態度と、先生に対する態度」


誰にでもあんな風かと思ってた。

佐藤くんと話すときは、オレと違ってもう少しラフに、力抜けて話してる気はしてた。

それは気付いてたけど、それは医者と学生さんの扱いの違いかと思ってたんだ。

花怜ちゃんが…?

いや、まさかね。

変に意識したら患者さんとして見れなくなりそうで、先入観を頭から振り払った。

そして、花怜ちゃんのカルテを開いたまま、現実問題と直面する。

今はそんなことよりも、彼女にとって大事なことがある。

この先、どう生きていくか、考えなければならないんだ。

花怜ちゃんの病名が確定した。

進行性の難病、筋委縮性側索硬化症。

通称ALSと呼ばれる、末期には呼吸筋までもが侵される病気だったのだ。
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