あおぞらカルテ
医者になって初めて、担当した患者さんの葬儀に出席した。

今までも臨終に立ち会うことがあったのに、花怜ちゃんはどうしても見送りたくなったんだ。


「先生、本当にお世話になりました。辛い最期でしたけど、花怜はきっと満足しているんじゃないかと思います」


両親からそう言ってもらえたことが、何よりもの救いだった。

遺影の中の花怜ちゃんは、あの日、散歩したときと同じ笑顔だった。

病院に戻ると、文野さんがオレを引き止めた。


「先生、これ」


花怜ちゃんが残して行った交換ノート。

オレがデートに誘ったページを最後に、もう返事はないんだと思ってた。

だけど…


“道重先生へ

 汚い字でゴメンナサイ

 今日のさんぽ 楽しかったです

 きっと一生忘れません

 ありがとうございました

         かれんより”


次から次から涙があふれてきて止まらなかった。

なんで助けてあげられなかったんだ?

医療に限界なんてあっていいのか?

十分に生きたならまだしも、まだ15歳だぞ!?

オレが小児科が嫌いな理由。

幼い命が消えていくのを見るなんて、悲しすぎるから。
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