あおぞらカルテ
最後の授業の終わるチャイムが鳴った頃。

オレは半分うたた寝をしていた。

緊張感はどこへやら…?

しばらくして、奈菜ちゃんは保健室へやってきた。


「部活、やってく?」


オレがそう言うと、奈菜ちゃんは首を横に振った。


「いいよ、待ってるし」

「…じゃあ、一本だけ走らせて」

「うんいいよ」


もしICDを植え込んだとしたら、その後激しい運動はできない。

心拍数が上がると誤作動しやすいからだ。

奈菜ちゃん、どう思ってんだろう?

友達と廊下を歩いて行く後ろ姿を見送りながら、不思議な気分になった。

…奈菜ちゃん、もしかして…。

しばらくして校庭のトラックに立った彼女を見つけた時、別人かと思った。

でも、どこかで見た姿。

あの病室に飾ってあった、写真の中の奈菜ちゃんだった。

スッと伸びた手足、ほどよく筋肉がついた健康的な体つき。

理想的なランナー体型だった。

クラウチングスタート。

エースの名に恥じない、綺麗なフォームで走り出す。

息を飲むほどに、美しい、奈菜ちゃんのラストランだったのだ。


「…くそっ…なんでだよ…!?」


ゴールで待っていた仲間と笑顔で抱き合う。

そんな光景を眺めながら、涙が出そうになった。

なんで…なんで奈菜ちゃんなんだよ!?

医者としてできることは何なのか?

…オレ、結局なんもできないじゃん?
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