あおぞらカルテ
母さんの命日。

墓参りに行くと、先客がいた。


「なんだ、空も来たのか」


墓参りには相応しくない、華やかな花束を抱えた父さんがいた。

父さんは墓参り定番の菊みたいな花を供えない。

まるで誕生日か結婚記念日みたいな、デカイ花束をドッサリと墓の前に供えるんだ。


「だって、毎年の恒例行事でしょ」

「一緒に来ればよかったなぁ」

「そうだね」


同じ屋根の下に住んでいても、オレは寝に帰るだけだから、父さんと会うことも少ない。

父さんは父さんで、論文や本の執筆があるから書斎にこもってる。

会うの、久しぶりだな。

墓参りを終えると父さんが言う。


「さて、帰ろうか」


車のキーをオレに向けて放り投げた。


「えー、オレが運転?」

「電車で来たんだろ?いいじゃないか、電車代が浮くぞー」

「…はいはい、准教授サマ」


父さんはオレを追い越して、どんどん先を歩いていく。

たまには親孝行するか。
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