あおぞらカルテ
「コラ、スピード出しすぎ」


助手席からブツブツ言ってくる父さんは、それはそれで楽しそうに見える。

なんとなくだけど、オレは両親に愛されて育った自信があるからか、大人になった今は父さんには逆らえない。


「そこ右」

「え?真っ直ぐだよ」

「右だろ右」

「いーや、絶対真っ直ぐ!」


…いや、たまには逆らうか。

だけど、根本的には父さんを尊敬しているし、育ててくれたことに感謝してる。

そんな父さんの背中を追って医者になったって言ってもいい。


「お前も立派な医者になったなぁ」

「は?なんで?」

「この前救命を通りかかったら、お前がいるのが見えた」


どこから見られてたんだろ。

恥ずかしいような変な気分。


「ただ、お前は母さんに似て、たまに突っかかるからなぁ。同期は大切にしろよ?」

「…わかってるよ」


父さんはあの小畑との一悶着を見ていたのかもしれない。


「オレ…医者に向いてないのかな…」
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