君と杯を交わそう ~契約婚から築く愛~
杏莉は自分の分と真司の分の両方のお弁当を持って、仕事へと向かった。

「おはよう。杏ちゃん」
「おはようございます。紫苑先輩」

一番最初に会ったのが紫苑で良かったと胸を撫で下ろす。
事情を知る人と知らない人では、接し方も変わるし、気持ちの上でもやはり違う。

「おはようございます。紫苑先輩、杏莉」
「おはよう。珠洲ちゃん」

仕事を始める前の一服。人それぞれだけど、毎朝、杏莉はミルクティーを飲む。
そこに紫苑と珠洲が珈琲を飲む為にやって来ていた。

「スミちゃんは、同棲だっけ?」
「うん。やっぱり、お父さんが許してくれなかったみたい」
「そっか。フリーター同然だもんね。久仁彦さん」
「半年か。人の気持ちを簡単に変えられるのかな」
「やるしかないですよ。私は真司さんが好きだから、頑張ってみる。後悔したくないし」
「私も」

人の気持ちを簡単に変えられないのと同じように、自分の気持ちも簡単には変わらない。
それなら、後悔しないように一生懸命、恋をして愛するだけだ。
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