薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~
「良い子ね、本当に良い子ね、結斗は。でも私は……」



嗚呼、優しい。優しくて怖い手。それが俺の頭に乗せられる。


あの頃の俺はそれがとても嬉しかった。なんせ大好きな母に褒められる時に伸ばされる手だから。尊敬する母に認められる時に置かれる手だから。


大好きな母。尊敬する母。


それは藤岡家の様に癒しの力を持ちながらも、櫻澤家の様に妖の狩りの力―――両方を持ち合わせた女性。だからこそ冷酷で冷徹な顔と優しく温かい顔を持つ、それはそれは強く気高い人。


そんな母は俺とそっくりな容姿をしていた。真っ白で雪のような肌も。長く垂らされた髪の質も、色も。そして瞳の色も。
< 131 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop