薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~





「……その後は全て崩れていったわ。特にダメージが大きかったのは櫻澤家と藤岡家の関係。一瞬にして敵対関係へと成り変わっていた。あとは私達の親子関係も一瞬で崩れてしまったわ。

 人間というのはね、裏切りが一番心にくるの。だって信じていた者が敵になるなんて嫌でしょう。それがあの事件後の関係が崩れ去った主な要因だったのでしょうね。

 私もね、陰の気で心の脆き紅華が、愛しいあの子が自分を見た時の冷たき視線、あれがショックでたまらなかったの。そう思う自分に対してもショックだった。だから家を出た。だって例えどんなことが起きようと息子の見方をするのが親なのだから。それが一度でもできなかった私は親として失格。結斗には相応しくない。そして紅華を楽にするのも。

 だから貴女に手伝ってほしいの。私の代わりに。あまりにもみっともない母親の代わりに。結斗と紅華を楽にしてほしいの。お願いできるかしら?」



頷くしかできなかった。あまりにも衝撃的なものだったから。私でも覚えていない薄れた記憶の中で結斗君に大きな傷が産まれたなんて思えなかったから。自分が関わりあることなら、自分も関わりたい。協力したい。でも。でも。私程度のものでできるのだろうか。


結局悩みを抱えたまま家へと帰ることになった。
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