薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~



「まぁ、貴女は知らないでしょうね。だって言っていなかったものね。私も櫻澤家の当主になっている筈だった秋宮《ときみや》さんに惹かれていたの。結局は別の人と結婚してしまったのだけど……。

 そんなことより紫音のこと支えなさい。まだまだ未熟で誰かが支えないとダメでしょうから。母である私がすればよいのだろうけど、母である前に藤岡家当主。藤岡家の皆を裏切る訳にもいかない。だから頼んだわよ」



確かにそうだ。


母は私達の母である前に藤岡家当主。だから自分の下につく多くの者のことを優先せねばならない。私情をはさんではならない立場。故に娘の進もうとしている道が藤岡家の者達と相反するものならば、関われない。例え母として補助したくても、ならない。櫻澤家協力なら尚更。だが私は藤岡家本家の者ではあるが日本国としては成人として認められていない故に少し枷が緩い私ならば紫音を支えることができる。だから……。



「はい」
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