薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~
怪我を負ってから1日経った朝。


俺―――櫻澤結斗は以前のように学校へ登校した。


まだ完璧に傷は癒えていない。だが俺にはしなければならないことがある。だから学校へ来た。


隣で歩き不機嫌な表情を浮かべる静寂からは渋々ではあるが、学校へ行く承諾を得ている。静寂をそばに置くことを条件でだが、それは致し方ない。それに静寂を傍に置いても支障は出ない。



「ベタね、下駄箱に恋文!?呆れ果てて何も言えないわ」



そう。俺の下駄箱に文が入っていたのだ。まぁ、ラブレターとは限らないが。


静寂のように考えを早まらない方が良い気がする。これくらいのことなら別に構わないが、考えを早まるのは命の危険にも関わる。静寂のことだからそんなことないだろうが。なんせ恋文などというのは冗談だ。そう思える根拠がある。


恋文と思えるような封筒に入っていない。花柄も、ハートも、女の子らしい柄がひとつもない白地の無地。必要だから書いた、そう感じさせるものなのだから。
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