薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~
紫音の目の前には一人の少女が頭を下げていた。その様に紫音は唖然とする。
少女の名は霧澤静寂《きりさわしじま》という。
静寂は実に美しい漆黒の長髪を下へとたらし、紫音に必死に頭を下げる。スタイルも非常に良く、モテ要素を全て兼ね備えているような少女。
そんな静寂がなぜ紫音に頭を下げるのか。
それには理由があった。
突然だが、静寂には幼馴染の少年がいる。
その少年はこの学園に所属しており、現在引きこもりもどきのようなもので、学園に来ていないのだ。だからいつも静寂がその少年に届け物やらを届けている。
しかし静寂に今日は急な用事ができたために少年の家に行けなくなってしまったのだ。
だからこのように紫音に静寂が頭を下げている。
それでも納得できない紫音は問いかける。
「なんで、私?」