薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~



一体私は何をしているのだろう。


初めての仕事もこなせず呆然としている私。それは実にみっともない。それなのに今、彼はいったい何をした。彼は私が仕事で受け持ち、倒せと命令された物体を1つの隙も見せずに一瞬にして倒した。


蔑むように。


冷静に。


冷血な瞳で、


彼のように冷たい剣を持ち、


切った。


物体の急所を的確に判断して。


それはまさに瞬殺としか言えない。


今残るのは、物体の頭から上がない物体と今もなお不気味に目を開き私の方を見つめる頭。

恐ろしくないと言えば嘘になる。私の手足は小刻みに震え動かなくなった物体の恐ろしさを語っている。


何より恐ろしかったのは物体ではなく、物体を倒した彼の瞳だった。彼の瞳は紅く輝き、まるで人外であることを語っているようであった。そんな彼の瞳は物体の息の根が止まったことを確認すると、見えなくなった。


そして刀を鞘へと納める。その際に金属独特の輝きが放たれる。


私はそのさまをずっと見ていた。いや、見ることしかできなかった。


だって私は当主つまりは母親から下された任務をこなせず、挙げ句の果てには怖気づき、彼に倒されてしまったのだから。


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