薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~
「結斗《ゆいと》、お疲れ様」
藤岡紫音《ふじおかしおん》の隣にいる少女、霧澤静寂《きりさわしじま》がそう言った。
それに反応して少年、櫻澤《さくらさわ》結斗が振り向いた。そこには先程までの恐ろしい少年から生真面目な優しげな雰囲気を出す少年へと戻っていた。
紫音はなぜかそれに対して緊張が解けたかのようにほっと胸をなでおろす。
もしかして私は彼の冷酷な姿に恐怖したのだろうか。そんな疑問が紫音の頭でよぎる。おそらくそうなのであろう。誰しも冷酷かつ残虐。まるで人間ではない何かにしか見えない姿に配布を抱くであろう。そんな姿の結斗を平然と見ているのはおそらく静寂だけ。