薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~
後ろからだとよく見える。


自分の幼馴染である霧澤静寂《きりさわしじま》の姿も視線を変えれば見える。


彼女は比較的に真面目に授業を受けていない。


学校など滅多に来なかったから今までは真実を知らぬままであったが、ここで確信がついた。予想はしていたが、先生の話など聞いていない。


静寂の目に映っているのは授業を行う教師ではなく、窓を隔てた外の世界。グラウンドの姿など見せるかと存在する、巨木の葉。


一本の木である筈なのに色は様々だ。光によって黄緑色を見せるかと思いきや、影に入ると途端に影で黒系統の色が含まれる。しかも光の辺り加減でもまた違う。自然とは厄介なものだ。木の幹だって、そうだ。複雑な模様を繰り広げている。規則的ではなく、不規則。しかも気によって違う。それが自然の美しさなのだろう。


と、まぁ幼馴染はそんな厄介な自然を眺め何やら考えている。少しぐらいは真面目に受けてほしいものだ。
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