シャクジの森で〜番外編〜
『きゃぁ・・・イタタッ・・イターい・・もう、何てとこからおりてくるの!危ないじゃないのよ!』
『おいおい、何だ、こんな時間にゴミを捨てに来るメイドがいるとは聞いてないぞ』
『あぁ、不味いな。口封じするか?一人くらい行方知れずになってもいいだろう』
『おいおい待てよ!無駄な殺生はするな。後から来るのに叱られるぞ―――娘さん、今見た事は誰にも言うなよ。娘さんの顔はしっかり覚えた。今は何もしないが、この先は、保障できんからな』
「使用人だと思っていたのに、違ってて・・あ、私、怖くて・・・おそろしくて・・・腰が抜けてしまって、暫くそこから動けなくて・・・」
途切れ途切れに話すジェシカの声は小さく震え、瞳からは大粒の涙がこぼれおちる。
小さな胸の中に怖ろしさを抱え、今日1日を過ごしていたのだ。さぞかし、辛かったことだろう。
こんなことがあったんだ、医務室の中で、あれほどに泣き、質問にも頑なに口を閉じるわけだ。
侍女長が慰めるように背中を撫でているが、ジェシカの震えは一向に止まらない。
「そうか、大変な目に会ったね。大丈夫だ、城の中で皆と一緒に働いている限り、君の身は安全だ。私が保証しよう。その者たちの姿はどうだったか覚えてるかい?」
「・・・はい。二人いて、一人は黒髪で、一人はブラウンで・・服装は・・ここの使用人のものと一緒でした。それから・・大きな鞄を一つ持っていました」
二人というのは、ラウルからの報告より少ない。
あの時に木立の中にいた者と一緒だと思うが、“後から来る”というのを入れて、三人なのか。
いや、もしや三人以上に侵入されていたということもあり得るか。
「ありがとう、ジェシカ。よく話してくれたね。侍女長、彼女の勤務体制を見直し、一人にしないよう気を配ってくれ。私も寮周りの警備を強化するよう手配する」
「はい。心得ております。さぁ、ジェシカ、行きましょう」
肩を抱くようにし、侍女長はジェシカを連れて退室していく。
しかし、あの城壁を乗り越えるとは・・・。
きっと、私が気付かぬ盲点があるのだろう。
もう二度と城に侵入されぬよう見直さなければならない。
アランと相談しなければ―――
『パトリック様、アラン様がお見えで御座います』
―――アランが、ここに?
返事をする間もなく扉が開き彼が入ってくるので、急いで席を立ち、場を譲った。
「―――パトリック、失礼する」
「君自らここに来るとは、珍しいな?」