オトナの秘密基地
「どう、思い出した?」


「はい。『会長』ですよね?」


「俺が児童会を引退してからも、一年はみんな『会長』って呼んでたよな」


「だって、本名がわからなかったから」


「そうか。だから俺の名刺を見ても気づかなかったんだな」


「それで私の名刺を見て笑ってたんですね」


二人で顔を見合わせて笑った。

笑ったあとで……私は唇を噛みしめた。

私が中田さんの事を思い出さなかった訳が、もうひとつあった。


「あの頃、いっぱい遊んでもらいました。

すごく感謝してたんです。

それなのに、卒業式の日に、私……」


大好きな人だけど、封印したい過去とセットだった『会長』のこと。

今思い出しても、本当に申し訳ないことをしてしまったと思う。

あの時、もっと早く行動していたら。

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