オトナの秘密基地

すると、『盛り塩さん』が険しい表情を浮かべて、私の肩をトントンと叩いた。

彼の口元を注視して何を言いたいのか探る。


「あなたは、電話で会話ができているのか」


もちろん、できる、と頷いた。


「俺の声が聞こえない?」


口パクにしか見えないので、頷く。


「解った。君が何ともないのなら良かった」


その言葉にはっとした。

私は、電話の受け答えができる。

でも『盛り塩さん』は、多分……。


「俺は声が出ない、耳も聞こえない」

「どうしてですか? さっきしゃべっていたのに」


着信音でびっくりしていたから、耳だって聞こえていたはず。

急に話せない、聞こえない状態になったの!?

『盛り塩さん』がますます険しい表情で何か言っているけれど、よくわからない。

首をかしげていたら、手をそっと掴まれた。
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