オトナの秘密基地

打ち込まれたwordの文書は、保存せずにそのまま電源を切っていた。

このPCは、ショールーム用に置かれたものらしい。

時計を見たら、もう一般企業のお昼休憩が終わる時間だった。

中田さんが突然こんな状態になったのを、ショールームの営業さんに知られるのは不都合な筈。

彼は玄関に散らばった盛り塩を手でそっと集めていた。

パンフレットを入れるためのビニール袋に、塩と割れた皿の欠片を片づけ、私の方を向いて口を動かしながら、時計を指さす。


「時間は大丈夫?」


私も頷いて言う。


「今日は休みなの。

あ、今の私の自己紹介がまだだった」


夢での名前は言ったけど、現実の名前を言い忘れていた。

< 58 / 294 >

この作品をシェア

pagetop