オトナの秘密基地
今日の和子さん、妊婦さんとしては過酷な条件が揃っていた。

狭い防空壕でずっと同じ姿勢のまま耐えて、それからすぐ立ち上がって移動したら、貧血になるのも無理はない。

さらに、こんなにぎゅうぎゅうさらしを巻いていたら、自分も赤ちゃんも苦しいんじゃないかな。

あのままだと、赤ちゃんに血液が送られなくなってしまうところだった。


どうして苦しいのを我慢してまで、こんなに締め付けていたのか考えた。

多分答えは、お腹をできるだけ小さく見せたかったということじゃないかな。

和子さんは、大きなお腹で歩くのが恥ずかしいって考える年代の人だもの。


今なんて、見た目では判断できない妊娠初期の大事な時に、できるだけ理解と協力を得ようとする『マタニティ・マーク』っていうのもあるのに。

電車に貼ってるあのマーク、もし近くに付けている人がいたら、席を譲ろうと思うもの。

マタニティ・マークがないと気遣いされにくい社会は、ある意味問題ありだ。

でも、マタニティであることを恥ずかしいと思っている、この時代よりはずっとまし。
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