兄妹芸人(仮)
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「で、こうなったと。」
「そうそう。明里ちゃん超男前なんだよ。もうオレびっくり。」
昨日、勢いと情けでポンコツの相方をやりますか?の質問にYesと答えた自分を呪いたい。
確かに玄関が開いた音はしなかった。
だけど、まさか帰ったと思ってた人がリビングの扉の外で聞き耳立ててるとは思わないじゃないですか。
「ごめんね。明里ちゃん。
でも、いつもオレたちが話してるとき混ざりたそうにウズウズしてるの見たら、なんか申し訳なくなっちゃって。」
そう。これは今野くんの策略だったのだ。
自分が辞めると言えば慎太郎はうなだれる。
それを見た優しい優しい明里さんは黙ってられなくて自分が相方をやると名乗り出るだろう。
そうすれば慎太郎も元気になってハッピーハッピーってな。
全部にまんまと嵌ってしまったあたしは馬鹿ですか。
「今野くんなんて嫌いだー!」
「えー俺は好きだよー。」
うるせぇ黙れ!