シュガーレス
そして、
「坂本さんっ!」
先生とは逆に、
あの日から五十嵐君とよく話すようになった。
「お疲れ、今帰り?」
「うん!
あっちに航平もいるからさ、良かったら一緒に帰ろうよ!」
その指差す方向に、三河が見えた。
「おーい、航平!
帰ろうぜ!」
そのやりとりの中、
何となく校舎の方を見ると、二階のベランダから白い煙が上がっているのが見えた。
‐‐‐ドクンっ!
それだけで、心臓が反応する。
「…坂本さん?」
「えっ!?」
呼び掛けられ振り向くと、五十嵐君が不思議そうな顔でこっちを見ていた。
「どうしたの?」
「何でもない…三河は?」
「それがアイツ、もうちょい自主練してくってさ!
ほら、来週からテスト期間で部活休みだからさー!」
「そ…そっか、じゃあ帰ろう」
五十嵐の腕を引っ張り、歩き始めた。
早く、ここから去りたかった。
あの場所は化学室のベランダだし、あんなところで煙草を吸う不良は先生しかいない。
こんなにも先生の存在を感じてるのに、彼と関われない事に耐えれなかった。