空蝉の光 -桜花乱舞-
私とお父さんが顔を見合わせていると、襖が開いた。
「やっと…、やっと見つけたよ、桜ちゃん」
そこには、汗だくで息を切らした彼がいた。
「一哉君…?」
私はいるはずのない一哉君の存在に呆気を取られた。
すると、一哉君はそんな私の手を取り、歩き出した。
「ちょっ…、一哉君!?」
廊下をズカズカと歩く彼を呼んだけど、止まる気配はない。
「一哉君…っ!」
私は手を掴む彼の手を振り払おうとした。
でも、弱まるどころか、掴む力は強くなった。
それでも、私はその手をどうにか振り払い、彼を睨みつけた。