冷たい旦那様


悠人の服の袖を、キュッと掴んで。


ドキドキしながら見つめていると、悠人が急に私を引き寄せた。



「…あー、もう。本当に俺って馬鹿だよな」


「…え?」


「ごめんな…気付いてやれなくて…」




悠人が抱き締める力を強める。優しい声に、何だか急に、目の前が歪んで来て。






「…綾、好きだ」





……溜まっていた涙が、その言葉を合図かのように溢れ出した。



悠人から初めて聞いた、“好き”。


こんなに幸せで、こんなに心が温かくなるなんて知らなかった。



…悠人、あたしも大好きだよ…。











< 35 / 41 >

この作品をシェア

pagetop