天菜
だが、そんなに運よく和輝が来るほど甘くはなかった。
働き初めて一ヶ月が過ぎようとしていた。
あいかわらず和輝が来る気配がない。
むしろ、この状況で来たら今までの苦労の無駄が水の泡になるって言ってもおかしくない。

暇な昼下がり。
普通のコンビニなら込み時だろうがここのコンビニはなぜか空いている。
『このままで大丈夫なのか...』
って思うくらい。

そんな中、一人のお客さんが来た。
「いらっしゃいませ~」
お店に来たのは若いギャル。
入ってくるなりまっさきにお菓子コーナーに向かい、カゴいっぱいにお菓子を詰めていく。
『おい.おい...』
俺は呆れながら見ているとお菓子を好きなだけ詰め終わったギャルがレジに来た。
「まぢ今やっばいからそうきゅ~でよろしく頼むわっ!!」
「はい...」
『ヤバいってなにがだよ!?』
1人で突っ込みを入れながらも黙々と作業を進めていく。
その間ギャルは携帯をいじって独り言を呟いていた。ようやく合計が終わり
ギャルに話しかけようとした瞬間―
~~~~♪
バカでかい音でギャルの携帯が鳴った。
「1500ぇ...」
「もっし~」
ギャルは構わず電話で話している。
どうすることもできない俺は、待っていることしかできない。
仕方ないから待っていると、ギャルの電話で予想外な言葉を聞いた。

「まぢ~和輝ヤバイわ!!オッケー!今から行くわっ!バイ~」

和輝...
まさかねぇ~。
聞くのはやだけどいちを聞いてみるか~...
「あの~...」
「あっ!!1500円だべ!?ちょうどだから!」
「いや...あの.和輝さんってのは...」
「あぁ~冬本和輝?知らね~の?!この辺の地元では人気のイケメンメンズ~だょ!?これ常識!じゃっ!!」
それだけ言ってギャルは
袋いっぱいのお菓子とともに去って行った。

人気...
常識...

「まぢかょ...
うっそぉ~ん!!」

俺はすっとんきょうな声を出して叫んでしまった。

誰もいない昼下がりのコンビニで―
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