一緒に、歩こう





「久しぶりに会えたから、ウキウキだっ」




「前見てろって。事故すんだろ」




「はーい」





隣に乗ってるけど、

手元には参考書。

実は祈願に行きたいと

言い出したのは隼人で。

行くのはいいけど、

行き来の間は参考書を

見てること、と

条件付けたのはあたし。

隼人は文句を言いながらも、

きちんと言うことを聞く男だから。

電話であれほど、ふざけんなとか、

絶対やだと言っていたのに。

隣を見てみれば、参考書を眺めている

隼人がいた。




「もうすぐ着くよ~!」



「参考書一通り読み終わったんですけど」




超有名な神社に来た。

その理由はないけど、どうせ

お願いするなら一流の神様に

叶えてもらおうと思ったから。




「人結構少ないね」




「寒いからじゃね?」




「んー、そうかな」




いつも通り、他愛もない会話を

しながら、大きな手があたしの

手を包んでくれる。

明日が終われば、隼人の進路が決まってしまう。

もう、近くにいない彼を

引き止めたいのは事実。






「神様お願いします」




賽銭箱の前で必死にお願いする。

隼人が合格出来ますように。

隼人が合格出来ますように。

隼人が合格出来ますように。

隼人が合格出来ま…、

って、あれ?





「隼人、もういいのー?」





隣に人の気配がなくなったなと

思って、見てみると。





「もーいい。あんまりしすぎると、叶えてくれねぇかもしんないぞー」




遠くにある絵馬がかかっている所で、

あたしを見つめていた。

あたしは遠くにいることも

知らないで、1人必死に

お願いをしていたというのに。





「あと1回だけ」




後ろに人が並んでいた。

だけど、そんなこと関係ない。

あたしは、もう1度心の中で、

隼人が合格出来ますように。と

唱えて、その場を去った。



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