ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「絶対次も来なくちゃだめだよ。

僕から逃げようだなんて、考えない方がいい。

君は僕から逃げられないんだからね」


言葉とはうらはらに、ひどく丁寧でやさしい声。

椅子に座っているあたしの肩を後ろからそっと抱かれて、あたしは内心震え上がった。


「いい? 柚希」


穏やかな、笑いさえ含んだ声。


ふと気づく。

黒川さん、初めてあたしを下の名前で呼んだ。


(どうして、あたしをそんなに縛り付けようとするの――?)


そこがどうしてもわからない。


できれば聞いてみたかった。


でも、怖くて聞けなかった。

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