ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
紅葉の頃のこの公園の風景を思い浮かべて、あたしは一人微笑んだ。


(もし時間があったら、ここの公園の絵でも描いてみたいな)


ちらほら、犬の散歩やジョギングする人とすれ違う。

忙しい世間と切り離された、ゆったりした時間がここにはあった。


――と。


ポロロン。

ギターの弦をかき鳴らす音がした。



(――ん?)


こないだの人?


ふと進行方向に目をやると、ベンチに腰掛けて、教本か何かを熱心に見ながらギターをぎこちなくかき鳴らす人がいた。

こないだと同じ、マスクに花粉症用のごついメガネ、深くかぶった帽子の重装備。

花粉症装備なんだろうけど、この時間に見るとあやしすぎるよ。

まるで変質者。

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