泣き顔の白猫
「ほんとにそんなんじゃないんですって。最近疲れてるから、甘いもの欲しいんですよ。あそこのカプチーノ、ハマっちゃって」
我ながら苦しい言い訳、と思いながらも、加原は言い募る。
嘘は言葉数が多いほど信用されなくなるものだが、これは嘘ではなく、ただちょっと伏せているだけだ。
特に、誰が淹れたカプチーノか、とか。
だが安本は、へぇ、と半ば疑問符のついた唸り声を出してから、急に真面目な顔になった。
「加原。あんま根詰めすぎるなよ」
安本はこんなふうに、時々はっきりと言葉をくれる。
態度や行動に優しさが垣間見える名波とは、ある意味では正反対の人間だ。
「大丈夫ですよ。それに、そうも言ってらんないでしょ?」
苦笑いを返して、加原は黄色いテープを潜る。
脇に立っていた制服警官の堅い敬礼に手振りで挨拶を返して、安本は溜め息を吐いた。
「あぁ、そうだな。これで四件目か……午前一時、館商OB、二十三歳の被害者は」