泣き顔の白猫
「途中で止まったんだろう」
「それで追いかけて、殴る蹴るの暴行を加えて、下まで落とした、と」
「あぁ。頬と顎を骨折してる。階段の角か手摺に叩きつけられたんだろうな」
加原は、安本が言った怪我の部位に、自分の顔で触れてみる。
一人で足を踏み外して、転げ落ちて怪我をするにしては、確かに不自然な場所だ。
安本が、顔を歪めて言った。
「酔っぱらい同士の喧嘩なんかじゃねぇな、明確な殺意がある」
詳しいことは司法解剖待ちだが、死亡推定時刻は大まかに言って、午前一時頃だ。
それが、この事件が事故ではない可能性を後押しする、一つの要因でもあった。
これまでの三人と、状況が似ているのだ。