泣き顔の白猫
「それで、歩道を挟んで、ですか……」
「あぁ。歩道まで四、五メートル転がり落ちたくらいなら、軽傷で済んだだろうにな」
岩壁にぶつかりながら転がり落ちて、もしかしたら下まで到達した時はすでに息はなかったかもしれない。
せめてもの救いは、遺体が発見されたことだ。
誰にも気付かれないまま鳥葬なんてことにならなくてよかった。
「でも、立松岬は夜間は立ち入り禁止なんですよね? 昼間は常に人がいるから、人を突き落とすなんて無理に決まってますけど……夜は無人だし、目撃者もいないでしょうね」
「そこは付近を地道にあたるしかないだろうよ。四人は高校の同級生だ。しかも、全員犯人に呼び出されて殺された可能性が高いとなれば、そっちから探ればなにか出てくるかもしれない」
「えぇ」
加原は、「そうです……けど……」と呟きながら、安本の反応を待った。
話はわかったが、それをわざわざ電話で、今知らせてくる理由がわからない。
いや、わかってはいたが、わかりたくなかったのだ。