泣き顔の白猫

場所は館町市立商業高等学校。

死亡した四人の母校だ。
時刻は十二時ちょうど。

一応遅れる旨と謝罪のメールは送っておいたし、少し仕事が入ってしまった、終わったらすぐに向かう、という留守電メッセージも入れた。
それなのについ、名波は今ごろどこまで来ているだろうか、もう駅に着いたんだろうか、なんて考えてしまう。

「ほんとに、悪いことしたな。できるだけ早く終わらせるか」
「いえ、それは。仕事なんですから、ちゃんとやります」

加原が言うと、安本は一瞬目を丸くしてから、小さく笑った。

「よし、行くか」

そして、安本の静かな合図と共に、校舎の中に足を踏み入れたのだった。

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