泣き顔の白猫


「罰ゲームだったんだよ、その子と付き合うってのが」

加原は声も出さずに、口を開けたまま顔を顰めた。

「ま、遊びだったんだな。別に本命の彼女もいたらしい。それを知った女子生徒が、逆上して、」

安本は、ぶすり、と声を出さずに言って、順手に重ねた手を前に突き出した。

罰ゲームまでならば、いかにも高校生がやりそうな悪ふざけだが、それで殺人沙汰にまでなってしまうとは。
弄ばれていたと知って逆上したとしても、悪いのは当たり前に、刺した方なのだ。

「ひどい話ですねぇ……」
「この事件といい、本当に不幸が続くクラスで……同窓会も、まだ一度も」

校長が、悲痛な顔で言う。
その言い方に加原は、なにか違和感を覚えた。
さっきからどうも、はっきりしない気になる物言いをする人だ。

「そうですね、この五年と少しの間に五人も亡くなったんじゃあ……」
「……あぁ、亡くなったのは、六人なんですよ」
「え?」

加原が聞き返すと、校長は、また写真を見るよう促した。
人の良さそうな顔が、悲痛に歪んでいる。

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