泣き顔の白猫

誰か倒れている。

真っ赤に染まって凍り付いた雪の上に、仰向けになって寝転がっているのは、人間だった。



まず、手袋をしていない指先に、怖々触れてみた。
明らかに生きていないとわかるほど、それは冷たかった。
だからそれ以上は、首筋にも手首にも触れることはしなかったらしい。

血を失って真っ白になった顔は、少し幼い。
頬に少し積もった雪を払ってやって、彼は、その顔が見覚えのあるものであることに気付いた。

館商の敷地内なのだから、関係者だと考えるのが普通である。
だが気が動転していたのか、ここの生徒や職員かもしれないなんてことは、その瞬間まで思ってもみなかったのだ。

冷静になって見れば、紺色のスラックスを制服に指定している学校はこの付近には館商以外にないし、近くに落ちている学生鞄も、指定のもので間違いない。

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