泣き顔の白猫

平河名波が怪しいと言い出したのは、畑野優馬の死から十日ほど経った頃、鈴木学が最初だった。

「平河は優馬に遊ばれたのを恨んでた」、そう言い出すと、友人たちも口々に賛同しはじめた。

始めに事情を聞かれた時はなにも言わなかった塚本や山田や川尻が、鈴木の証言が出て始めて口を揃えてそう言い出したために、警察は当然その真偽を疑った。

だが、証言には筋が通っていて、それぞれの話に食い違いもない。
加えて、犯行推定時刻の六時から七時半の間、名波の姿を見た者は誰もいなかったのだ。


鈴木たち四人の証言をまとめると、こんな具合だった。

彼らと畑野、そしてこの事件の二年後に自殺した丸井を含めた六人は、よく罰則付きのゲームをしていた。
勝敗のつけ方はトランプやボードゲーム、ちょっとした予想クイズなど、様々だ。

ある日その遊びの中で、負けた人が平河名波に交際を申し込む、という罰ゲームを決めた。
断られたり告白できなかった場合には、全員分の食事代を出す、という決まりだったらしい。

高校生が自由に使える金額なんて、たかが知れている。
名波になんとかして良い返事を貰って、すぐに別れれば、金を使わずに済む。
そういう考えだった。

そして、畑野優馬が負けたのだ。

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