スミダハイツ~隣人恋愛録~
「好きよ、榊くん」

「うん」

「ほんとは、ずっとずっと、好きだった。私だって、もっと早く伝えたかった」

「わかったから、ちょっと黙れ」


榊はくすくすと笑いながら、麻子の鎖骨を沿うように舌を這わす。

その時、ふと、麻子の脳裏をよぎったこと。



「あ!」


突然、麻子が声を上げたら、びくりとして動きを止めた榊は、



「な、何だよ」

「思い付いたのよ!」

「……は?」

「ラーメン特集なんだけどね。ほら、ラーメン屋さんって女性からは敬遠されがちでしょ? でも、やっぱり女性だって行きたいと思うの。だから、今回の企画は」

「麻子」


榊は苦笑いで、なだめるようにその名を呼ぶ。

そして麻子の頬をつねり、



「お前がどれほど仕事を頑張ってるかはわかってる。でも、今は俺のことだけ考えてろ」

「にゃー」

「じゃなきゃ、朝までヤッて、明日会社に行けなくするぞ?」


それは困る。

麻子は口を尖らせた。



「もう。榊くんがそんなこと言う人だとは思わなかった」

「俺をどんなやつだと思ってたかは知らないけど、まだそういうこと言える余力があるなんてなぁ」


榊はにやりと笑い、今度こそ喋れなくしてやるとばかりに、麻子の口を唇で塞いだ。

下階の住人の帰宅する足音が、ふたりの甘い密事の間に響いた。










END

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