スミダハイツ~隣人恋愛録~


『スミダハイツ』の一階の部屋には、それぞれ掃き出し窓があり、前には庭が広がっている。

晴香がここを選んだ理由は、不動産屋から「庭は住人が好きに使っていい」と言われたからだ。


まずは草を抜いて綺麗にして、ゆくゆくは花を植えたいと思った。


レンガで囲って花壇を作るのもアリだ。

ここの住人は庭の存在を気にしていないとわかったので、晴香は、それなら私好みにいじってやろうと奮起した。



引っ越し作業も終わり、いよいよ念願だった庭の改造に取りかかる。



草を抜きながら、あそこにあれを植えようとか、ああしたらいいなとか、晴香がわくわくしながら考えていたら、



「あんた何やってんの?」


コンビニ袋をぶら提げた、201号室の住人が、そんな晴香を驚いたような目で見ていた。

無視しようと思ったが、なぜか201号室の住人は、階段へは行かず、庭に入ってくる。



「草抜き? 物好きだねぇ。そんなもん、大家のジジイに電話すりゃあ、除草剤撒いてくれるのに」

「あ、でも、私嫌いじゃないんです、こういうの。無心になれますし」

「ふうん」


平日の昼間に暇そうにしているなんて、やはり201号室の住人は、定職には就いていないのだろうか。

いや、私同様、たまたま水曜日が休みというだけなのかもしれないが。


だからって、余計なことを聞いて、変に関わりを持ちたくはなかった。


でも、早くいなくなってくれと、念じる晴香の想いも虚しく、201号室の住人は、煙草を咥えてその場にしゃがみ込む。

晴香は凝視されていると気付きながらも、怖くて草抜きに集中した。



「なぁ」


201号室の住人は、いきなり晴香に声を掛けてきた。



「あんた草抜き上手いな。仕事は草抜き屋?」
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