スミダハイツ~隣人恋愛録~
「な、ななななな!」


眼鏡がずれ落ち、もう片方の鼻から鼻血を出し始めた良太郎。

ミサは、さらに引いたのと同時に、良太郎のうぶすぎる反応に驚いた。


だから、ちょっといじめてやりたい気持ちになったのかもしれない。



「どうしたの? 良ちん、あたしに触りたかったんでしょー? ほら、触っていいよ」


良太郎の手を掴み、自らの胸のふくらみに導く。

良太郎は「ひゃっ」と乙女のような声を出しながらも、震わせた手でミサの柔肌に触れた。


鼻血と鼻水を垂らし、泣きべそを掻きながら、それでも目の前にある欲求を求めようとする良太郎を見て、ミサは、不意に愛しさが込み上げてきた。



「もっとちゃんと触らなきゃ、わかんないでしょ? それとも良ちんは、こんなんで満足すんの?」


また、びくりとする良太郎。

呼吸を乱しながらも、良太郎の手がミサの秘部を隠す布を剥がそうとした、その時。


ピリリリリ、と、ミサの携帯が鳴った。


はっと我に返る。

良太郎も飛び上がったようにミサから身を引いた。



「す、すすす、すいませんでした!」


頭突きするように土下座した良太郎。



いや、あたしこそ、何をしようとしてた?

あたしはただ単に、何も知らない良ちんの反応を見て楽しんでいただけなんじゃないの?


そう思ったら、急に自分が最低な人間だと思えてきて。



「ごめん。あたし帰る」


荷物を引っ手繰り、ミサは逃げるように102号室から立ち去った。


ひどい後悔に襲われて、ミサは自室に入った瞬間、うずくまる。

もう良ちんに合わせる顔がない。

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