飛べない蝶
第一章

輝くネオン

  

薄暗い部屋に残る温もりを煙草で冷ます。いつからあたしは感情を失ったんだろう。いや、そもそも感情なんかあたしには  なかったのかもしれない。     


立花桜。17歳     
高校3年生の夏の今まで 
あたしの人生に幸せとか 
なかった気がする。  

幸せとか愛とか恋とか 
この歳にして最早 
どうでもよかった。 
愛とか恋とかわかんない。 
誰か教えてよ。  
恋愛、家族愛、友達愛 
たくさんあるんだろうけど 
どの味もあたしは知らない。  

バチン!! 
「痛いっ、止めて!!」 
「痛いじゃねぇんだって!!」 
どふっ… 
「うっ…苦しいよ…まま止めて…」 
「うるさい!!あー腹立つ。 
あんたなんかもう死ねばいい!!」  

ドンッ!!バコッ… 
「てめぇこの野郎ぶっ殺すぞ!!」 
「殺せるもんなら今すぐここで 
殺してみろよ!!」 
「誰に向かってそんな口叩いてんだよ!!」 「本当の父親でもないくせに」  

母や今は離婚して居ないけど 
何年か前までは父にも虐待が 
絶えなかった。  
父親は多額の借金をして 
理由をつけてはあたしのバイト代を 
取り上げるようになり 
それで親同士が喧嘩をしたり
家庭はすでにボロボロだった。  

中2から始まった虐待は 
いつしかあたしの慣れになり
痛いとも辛いとも感じず
ただされるがままだった。

そして笑うことも徐々に
減っていった―。
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