ミラヘノラブレター

□星



「ヤト、サアラちゃん今回のコンサートが終わったら、遠くへ行くらしいよ~。実家に帰るから歌姫辞めるんだって。」

「え?」

いつもの時空管理室。
マサキと監視中、のんびりした時間に不意にマサキが言った。

「聴いてないのか?」

「…俺はサアラとは関係ないからな…。」

そう、何もない。

「そうなのか?仲良しに見えるのに~。」

「別に…。」

きっと俺よりマサキの方がサアラと仲がいい。
サアラが時々、マサキだけに会いに来ている事も知っていた。

俺にはいつだって会いに来ない。
この前偶然この中で会ったくらいで…無理に時空を越えて捕まえた時くらいしか会う機会もない。
アイツは俺の事をよく知りたがって聞く。
だけど俺は…サアラの事を何も知らない。

(サアラ…マサキには言うのに…俺には何も言わないんだな…。)

「あ。またいるよ~。またサアラちゃんかな~。」

そうこうしているうちに、また機械に反応があった。

「行ってくる。」

連絡用の携帯を持って、転送装置を起動する。
同じ座標を見つけてスイッチを押して、時空を越える。

何度目だろう…?
サアラを見つけに行くのは…

「やっぱり…。」

「う…。ヤト、今日、やたら早くない…?」

やっぱりサアラだ。
金色の髪を間違うはずがない。

「帰るぞ。」

サアラの腕を掴んで転送装置を起動する。
毎回毎回の事だから、説教も最近は面倒になりつつあるし。

「あ!ちょっとだけ待って。これ見たら帰るから。」

「…?」

バタバタと珍しく慌てて腕から抜け出るサアラ。
いつも大人しいのに?
そんなに気になる事があるのか…?

改めて周りを見ると、そこには見覚えがあった。


サアラを最初に捕まえた場所だった。



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